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●その1 |
●その1
[僕は大人なんだ!成長したんだ!]
今回の作品を書くにあたって、最も刺激となったのは『子ども』である。
仕事柄子どもたちに接する機会が多く、そのせいか最近よく自分の子ども時代がふと甦ってくる事がある。その度に、「一体いつのまに大人になったんだろう?」と考える。すると、今の自分は子どもの頃からたいして変わっていないように思うのである。もちろん身体はしっかり成長していて、どこもかしこも大きくなり、生えるものは生えて、抜けるところは抜けてきた。まぁ、大人になりきれていない部品もあるが…。
そういった外見的なものでなく、精神面、心の成長が少ないのである。それはもう、遡れば5歳頃から変わっていない。好きな遊びはゲームにマンガ、おもちゃ。そして、ポテトチップを食べながらのアニメ観賞。それこそ、お年玉をもらった子どものようなお金の使い方をする。実際、今年の正月にはベイブレードを買った。しかも、リモコンで動かせるやつを!
いやはや。
ところが、実は先日「僕は大人なんだ!成長したんだ!!」と実感する出来事があった。それは、飲み会から帰ってきた夜の事だった。ザ・シャカリキでは、なにかというと酒を飲む。この日は、なんということも無い普段通りの練習であったが、その練習の打ち上げと称して飲んでいた。しかも、しこたま。僕は、フワフワいい気分で部屋に戻り、二匹のネコにニャーニャーと出迎えられ、めいっぱい幸せな気分で布団にもぐり込んだ。と、とたんに意識は途切れてしまった。
夢を見た。ビールを飲みすぎた為か、寝る前に行っておかなかった為か、トイレに駆け込む夢である。そこは、リアルにも自分の部屋のトイレで、疑うことなくパンツを下ろし、勢いよく用を足した。いやー気持ちよかった!ギリギリに駆け込んでの放尿には、なんとも言えない快感がある。これは大きいほうにも言える。それはさておき、そこで目が覚めすぐにこう思った。
「しまった!!」
僕はこの夢を子どもの頃から度々見ている。すると決まっておもらしをしていて、それは小学校、中学校、しまいには高校まで変わらずおもらしをし続けていた。その度に僕は両親に、「だってちゃんとトイレでしたんだもん!」「騙されたんだもん!」と、やりきれない気持ちを訴えていた。トイレだと信じておしっこをした場所は、なんと布団の中だったとは、まさにマトリックスである。
そして、この日も僕の不安を煽るように布団の中の湿度は上がっていた。おそるおそる股間へと手を伸ばすとズボンが湿っている!一瞬ドキッとしたが、湿り具合からして汗だと判断した。ほっと一息つき、いよいよ核心へと迫った。「今から下着洗って、シャワー浴びて、…布団はどうしよう?」そんなことを考えながら、覚悟を決めて股間あたりをグッと握りしめた。
ぬ、濡れてない!? その瞬間僕は「勝った!」と思った。何に勝ったのかはよく分からないが、とにかく嬉しかった。僕がアメリカンコミックスの主人公なら、「ヒャッホーウ!」と飛び上がっていたかもしれない。
何度も何度も、もらしていないことを確認し、自分の成長をかみしめた。時間は午前4時をすこし過ぎていた。
僕はそそくさと布団をでると、現実であることを確かめ、とりあえずトイレに入った。
(第8回公演 PIGGY BANK パンフレットより) |